温泉博物館 名誉館長の 温泉ブログ

  温泉の科学や温泉現象について、わかりやすく解説します

2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

露天風呂の敵、「アブ」と戦おう!

夏場の山の露天風呂は、アブとの出会いが待ち受けています。 アブ対策の基本は素肌を隠すことですが、なにしろ露天風呂では素っ裸であり、この上ない無防備な状態でアブに立ち向かうことになります。 車の上にとまったアブ アブの雌は、産卵に必要なタンパク…

カテキンが多いお茶はどれかな?

小学生が実験してみました 何年か前に「ヘルシア緑茶」がブームになった頃、お茶の中に「カテキン」が何mg含まれているかというのが一つの売りになっていました。 緑茶の中にはタンニンという成分が含まれ、その大部分がカテキンからなっています。すなわち…

温泉博物学 「入浴用湯の華」

温泉成分からつくられる入浴用「天然湯の華」 工場で重曹などの成分を調合してつくられる入浴剤とは別に、温泉地において温泉成分を樋などで沈殿させたり、太古の温泉沈殿物を加工したりしてつくる天然の入浴剤もあります。特殊なものとしては、別府明礬温泉…

いわゆる「温泉独特のにおい」は硫化水素臭

温泉のにおいの正体 温泉街に到着したとたん、温泉独特の匂いがして「ああ、温泉地に来たぞ!」という気分になります。私にとっては、何にも勝る歓迎のメッセージのような気がします。 噴気地帯の火山ガスにより「温泉のにおい」が立ち込める雲仙温泉 雲仙温…

温泉分析書の「ミリバル」とはどんな単位?

ミリバル(mval)という不思議な単位 温泉分析書の、「陽イオン、陰イオン」の欄を見ると、ミリバル(mval)という、他では聞いたこともないような単位が使われています。なにしろ、学校でも習いませんし、『単位辞典』のようなもので調べても載っていません…

白骨温泉の壮大な「幻の温泉」を追う

白骨温泉のもう一つの魅力 乗鞍岳や焼岳の東側に位置する長野県の白骨温泉。乳白色の温泉としてよく知られ、人気の温泉地です。 白骨温泉「お宿つるや」の露天風呂(撮影許可をいただいています) 白骨温泉周辺の基盤となる地層には、石灰岩の岩体が分布して…

名所になる要素を考える

鳥取県東郷温泉「寿湯」 温泉通の皆さんの中には、下の写真を見ただけでどこの温泉かわかる人が結構いらっしゃるのではないかと思います。 東郷温泉寿湯のメインアプローチ 温泉へのメインアプローチの「通路の幅が狭すぎる」ことで知られる鳥取県東郷温泉の…

温泉地の看板は楽しい!

温泉地や観光名所等に設置されている看板を真剣に見ると、とっても楽しいです。設置した役場や教育委員会の担当職員が、「説明しようとする対象」をよく理解していないために、時として私たちを大いに楽しませてくれます。 鳥取県倉吉市 関金温泉の説明看板 …

山の中の温泉地でタイムスリップ

奈良県 洞川温泉 奈良県天川村の洞川(どろがわ)温泉。深い山の中で時代に取り残されたかのように、独特のスタイルの木造和風旅館が街道沿いに軒を並べています。まさに圧巻です。 洞川の旅館街は、大峰山(山上ヶ岳)への修験者や参詣者の宿場として栄えて…

温泉がつくる美 エメラルドグリーンの湖

川の深い所は青緑色に見える (長良川) 川の水の深い所は緑色に見えます。これは太陽光のうち、赤色の波長の光が水の分子に吸収される性質があるため、残された青緑系の波長の光が川底で反射をしたり水中の微粒子によって散乱をしたりして私たちの目に飛び込…

本当に愛すべき自然とは 白浜温泉で考える

和歌山県の白浜温泉 その名前の由来となった白い砂浜のビーチ「白良(しらら)浜」が有名です。 白浜温泉のシンボル的な景勝地「白良浜」 ご存じの方も多いかと思いますが、白浜温泉の白い砂浜は砂が年々減っていき、実は「真っ白すぎるぐらい白い砂」を24年…

温泉地の「温泉環境」に酔いしれる 例えば湯の峰温泉

和歌山県の「湯の峰温泉」 言わずと知れた熊野本宮詣での湯垢離場です。いっぱいの温泉環境が心地よく迎えてくれます。 湯の峰温泉の中心部界隈 一、温泉街を包み込む温泉の香り。幸せの硫化水素臭との出会い 二、湯の峰川の河床の雑多な泉源と引湯パイプの…

温泉界のスーパースター 空海

宗教も神社仏閣にも全く興味のない罰当たりな私ですが、空海(弘法大師)にはあこがれます。 「空海」は僧としての名前で、醍醐天皇から贈られた号が「弘法大師」。大師の号を持つ高僧は24人いるそうですが、今の世の中で「お大師」とか「弘法様」と呼ばれて…

山梨県は「ぬる湯」王国

山梨は実は「ぬる湯」と「ぬるめの湯」の温泉大国なんです! 山梨県の増富ラジウム温泉や下部温泉は、全国を代表する「ぬる湯」の湯治場として古くから知られてきました。長時間入浴していると、「自分の体温で周りのお湯が温まる」ような温泉です。 山梨県…

析出物こそ温泉の風情「山梨県芦安温泉の石膏」

温泉の浴槽に、温泉成分の析出物がいっぱい付着していることがあります。多くは炭酸カルシウムからなる石灰華です。うろこ状や小さな棚田状の模様ができています。 山梨県芦安温泉「岩園館」 山梨県芦安温泉の岩園館の露天風呂は少し違って、石膏(硫酸カル…

田沢温泉のすばらしい硫化水素臭と、その起源

信州の松本と上田に挟まれた山間部の山里には、鹿教湯温泉、別所温泉、田沢温泉、沓掛温泉、霊泉寺温泉など、古くからよく知られた温泉地が点在しています。どの温泉も、ゆっくり湯治できるような落ち着いた温泉地で、私は大好きです。 いずれの温泉も無色透…

わが国唯一の温泉博物館「下呂発温泉博物館」

下呂発温泉博物館 岐阜県の下呂温泉には、わが国唯一の「温泉博物館」があります。 下呂発温泉博物館の入り口 下呂発温泉博物館の外観 日本人は「温泉好きの温泉知らず」と揶揄されることが少なくありません。昔から温泉が大好きで生活の中の重要なポジショ…

下呂温泉はなぜ「日本三名泉」なのか

下呂温泉、草津温泉、有馬温泉は「日本三名泉」と呼ばれることがあります。なぜ、この三つの温泉地が「日本三名泉」なのでしょうか。 江戸時代の温泉番付(下呂発温泉博物館所蔵) 下呂温泉の歴史は古く、『飛州志』や、その他の記載から、平安時代の延喜年…

下呂温泉が湧き出すメカニズム

下呂温泉とかつての露天風呂「噴泉池」 残念ながら現在は足湯として利用 岐阜県の下呂温泉は、川の水や降った雨(天水)が断層などから浸み込んで地下深くに達し、それが地下深くで温められ、再び湧き出してきたものです。 かつて下呂温泉地内の飛騨川の河床…

温泉浴槽の泡で汚れがわかる

温泉が給湯口から温泉浴槽に落下する時、同時に空気を取り込むために、水面に泡ができます。 温泉ではなく、きれいな水なら、水面にできた泡はすぐに消えます。 温泉の場合は、食塩泉は粘性が高いので泡がやや消えにくく、炭酸カルシウムを大量に析出するよ…

「乳白色の温泉」のメカニズム

あこがれの乳白色の温泉 青色の温泉のメカニズムは、メタ珪酸粒子によって「レイリー散乱」が起こることによるものでした。 それでは、乳白色の温泉のメカニズムは?と、考えたくなります。今度のキーワードは、温泉で生成される微粒子と「ミー散乱」です。 …

「青色の温泉」ができるわけ

「青い温泉」も「青い空」も同じメカニズム 子どもの頃はずーと、空が青いのは宇宙の色が見えているからだと思っていました。 太陽の光は「波長の違う様々な色の光」からなり、そのために、光が水滴やプリズムなどを通過して分解されると「虹色」となって現…

温泉はどこへ向かっているのか

『驚異のドキュメント 日本浴場物語』を視聴して 12年前の日本温泉地域学会において、東京国立近代美術館フィルムセンターの浅利浩之さんが、「映画『驚異のドキュメント 日本浴場物語』が物語る浴場と欲望」というテーマで発表をされました。強烈なインパク…

つげ義春の温泉

岐阜市柳ケ瀬の「ねじ式」 岐阜市の歓楽街?柳ケ瀬に、国宝級(人によって見解が異なります)の看板があります。「ねじ式」です。スナックの看板です。夜になるとピンク色の輝きが一層魅力的です。 柳ケ瀬の「ねじ式」の看板。 タイトルも字体も色彩もすばら…

地名も大切な文化だと思うのですが

私が大好きな地名 23年ぶりに大好きな地名の標識に会ってきました。 私が日本一好きだった地名 「兵庫県 温泉町 湯」 「温泉町湯」という憧れの地名も、浜村町と合併して今や「新温泉町湯」になっていました。ゴジラもウルトラマンも温泉も「シン」の時代な…

温泉が海水に混じると「にごる」!

温泉の楽園「薩摩硫黄島」 鹿児島県の薩摩硫黄島へ行った時、船の横をトビウオが飛ぶわ飛ぶわで、びっくりしました。鳥のように数十メートルは軽く飛んでいました。トビウオの「羽のような鰭(ひれ)」は飾りではなく、ちゃんと機能していることがわかりまし…

温泉の未来は君たちにかかっている

「いいねえ! 3年4組」 長野県にある諏訪湖のほとりに湧く2つの温泉地。昔、駅のホームに露天風呂があったのが上諏訪温泉。湖畔の片倉館に圧倒されます。 一方、諏訪大社の門前町であり、中山道と甲州街道が交わる宿場町でもある下諏訪温泉。小さな旅館や…

「標高」と「海抜」はどう違うの?

能登地震の津波災害を目の当たりにして 今回の能登半島地震でも大きな「津波」が押し寄せ、甚大な被害が出ました。海岸沿いの低地の恐ろしさを再認識することになりました。 山の高さなどの場合「標高○○m」と表記されるのに対して、海岸沿いの低地などの場合…

いわゆる「黒湯」と言われる温泉について

「黒湯」はなぜ黒いのか 東京湾周辺の地域では、昔から「黒湯」と呼ばれる透明感のある黒褐色~褐色(琥珀色)を呈する温泉が湧き出しています。 在りし日の「麻布十番温泉」の黒湯 北海道の十勝川温泉では、このような褐色の温泉を「全国的にも珍しいモール…

旅館の夕食に出される「紙鍋」が燃えないのは何故?

夕食の紙鍋が燃えない 先日泊まった田沢温泉の旅館の夕食に、写真のような「紙鍋」が出されました。宴会などでもよく見かけます。なぜ、紙の鍋を燃やしても燃えないのでしょうか。 旅館の夕食で出される「紙鍋」 紙鍋の中は、必ず何らかの汁(水)で満たされ…