温泉博物館 名誉館長の 温泉ブログ

  温泉の科学や温泉現象について、わかりやすく解説します

温泉はどこへ向かっているのか

『驚異のドキュメント 日本浴場物語』を視聴して

12年前の日本温泉地域学会において、東京国立近代美術館フィルムセンターの浅利浩之さんが、「映画『驚異のドキュメント 日本浴場物語』が物語る浴場と欲望」というテーマで発表をされました。強烈なインパクトがあり、帰宅後、早速DVDを購入しました。

『日本浴場物語』のDVD

 

作品は「風呂とは何か」というテーゼを発しているようですが、それよりも高度経済成長期の温泉や風呂の映像が新鮮でした。

 

大阪万博でおなじみの「人間洗濯機」、今は廃墟となっている和歌山県有田観光ホテルの「空中風呂(アポロ風呂)」や「鏡風呂」「牛乳風呂」、その他全国の、「金風呂」や「ジャングル風呂」など、団体客を取り込むための話題性のある風呂が次々と登場します。ちなみに空中風呂とは、風呂に入りながらロープウェー(ゴンドラ)に乗って空中散歩ができるというものです。

 

国の天然記念物である夏油(げとう)温泉の石灰華ドームの頂上部の湯が湧き出す部分を削って穴をあけ、そこに入浴しているショッキングな映像も映し出されていました。

 

著作権の関係で画像でお見せできないのが残念ですが、「日本浴場物語」や「有田観光ホテル」で画像検索すると、一部画像が見られます。

 

そんな映画を見ていると、現在の温泉はどこへ向かっているのか考えさせられます。50年ぐらい未来の人々が、映像に残った今の温泉を見て滑稽に思ったりしないだろうか、温泉はまっとうな方向に向かっているだろうかと、ちょっとだけ気になる部分があります‥。今あるすばらしい温泉が、いつまでも存続し続けることを願ってやみません。