温泉の濃さは入浴剤何袋分?
温泉分析書にある総成分量の数値を見ても、それが一体どれぐらい濃いのかよくわかりません。そこで、単純に「水に何かが溶けている」といった濃さを、「家庭の浴槽(約200L)に、市販の入浴剤を何袋分溶かした濃さに匹敵するかで見てみようと思います。
有馬温泉天神泉源の濃さ
有馬温泉の天神泉源は、わが国有数の成分の濃さを誇る温泉が湧出していることで知られています。1985年の論文では、温泉水1kgあたり、69.71gの成分を含む(ガス成分を除く)ことが報告されています。これは、海水が1kgあたり約35gの成分を含んでいますので、天神泉源は、海水のほぼ2倍の成分を含むことになります。
市販の入浴剤は一袋25gや30gに設定されています。ここでは、仮に入浴剤を1袋25gとして計算していくことにしましょう。
家庭の浴槽を一般的な200Lと想定します。家庭では、浴槽にだいたい入浴剤を1袋入れますね。主成分は多くが重曹ですので、色のついたつるつるしたお湯になります。
有馬温泉天神泉源は、温泉水1kg(ほぼ1リットル)あたり、69.71gの成分を含んでいますので、家庭の浴槽全体には、69.71×200=13942gの成分が含まれることになります。この13942gというのは、入浴剤25gの約558倍(13942÷25)に当たるので、入浴剤に換算すると、家庭の浴槽に約560袋入れた濃さに匹敵します。
こうしていろいろな温泉の濃さを、入浴剤何袋分かに換算して考えると、温泉の濃さを実感しやすいのではと思います。
ちなみに、入浴剤1袋100円ぐらいだとしますと、単純に有馬温泉天神泉源の濃さの風呂に入るためには、56000円もかかります。そう考えると、温泉とはただものではないと思えてきます。
温泉施設を運営される皆さんも、自分の施設の自慢の温泉を、こんなふうにPRされてみてはいかがでしょうか。
温泉の二酸化炭素濃度は?
話は変わって、含有二酸化炭素濃度(炭酸ガス濃度)について考えてみましょう。
栓を開けていない状態の大手メーカーのビールは、1L中、二酸化炭素が約4500mg(4500ppm)程度含まれているそうです。この数値と、温泉に含まれる二酸化炭素量を比べてみると濃さのイメージが湧くのではないでしょうか(ひょっとしたら私だけでしょうか)。
和歌山県の花山温泉の場合、温泉1kg中に2631mgの遊離二酸化炭素が含まれています。この値とビールの値を見比べると、花山温泉の二酸化炭素濃度は、ビールの半分以上にも匹敵することがわかります。我が国有数の含二酸化炭素泉は、少し気の抜けたビールぐらいの二酸化炭素が含まれているということがわかります。
昔から、「一度ぐらいビールを満たした浴槽にザブンっと浸かってみたい」と思っていましたが、炭酸泉で十分だと自分に言い聞かせられるようになりました。