東西で文化が違う
「どん兵衛のだしの違い」や「雑煮の餅の形」、「エスカレーターの左右どちらを空けるか」など、「東西で文化が異なる」といった例をよく耳にしますね。
そんな中で入浴に関するものとしては、特に「ケロリンの風呂桶の違い」や「銭湯の浴槽の位置の違い」がよく知られています。
東西で違うケロリンの風呂桶の大きさ
銭湯や温泉施設の浴室でよく見かける「黄色いケロリンの桶」。肝心の「ケロリン」より黄色い桶の方がよく知られた存在になっています。高速道路のサービスエリアの売店には「ケロリングッズ」コーナーがあるほど人気があるようです。
「ケロリン」は、言わずと知れた富山県の内外薬品(現:富山めぐみ製薬)が販売する薬の商品名。ケロリンの桶は、その販売促進のための宣伝媒体(広告)として銭湯などに置かれたものです。
その「ケロリンの桶」には、「関西型」と「関東型」の二種類があり、あえて、大きさや重さが違うように作られています。
・「関西型」‥‥重さ260g・直径21cm・高さ10cm
・「関東型」‥‥重さ360g・直径22.5cm・高さ11.5cm
「関西型」ケロリンの桶の方が「関東型」の桶よりも100gも軽く、直径や高さが1.5cmずつ小さい仕様になっています。下の写真は、下呂発温泉博物館で両者を比較できるように並べて展示したものです。右側が「関西型」で、左側が「関東型」です。
ぱっと見、大きさの違いはそれほどよくわかりませんが、右側の「関西型」の方が薄く作られていて、透き通って見えるのがわかります。ちなみに、真ん中にあるものが本来の主役である「ケロリン」です。
桶の大きさと入浴文化の違い
関西では、浴槽が浴室の中央に設けられていて、浴槽から桶でお湯を直接すくって身体にかけてから浴槽に入る習慣があるようで、桶が大きすぎると重くて使い勝手が悪くなります。そのために小さく軽いものが求められたと言います。
それに対して関東では、いったんカランを使って身体をよく洗ってから浴槽に入る習慣があるため、桶は床に置いて使います。桶が大きい方が重宝したようです。また、浴槽は壁に接するように作られています(富士山の絵が掲げられているあの銭湯のようなイメージです)。
このように二種類の「ケロリンの桶」が存在していますが、インターネットのある記事によると、「関西型」の方は、現在、京都や兵庫の一部の銭湯のみで使用されているに過ぎないそうです。
この「ケロリンの桶」は「永久桶」などと言われるように、大変丈夫に作られています。そういえば、我が家の風呂でも、もう20年以上活躍していますが、全く劣化していません。ケロリンという宣伝文句も未だに鮮明です。さすがです。
毎日黄色いケロリン桶を見ながら風呂に入っていますが、「ケロリン」は買ったことがありません!
おまけ。「泉源」か「源泉」か
温泉が湧き出す「場所(湧出孔)」のことを「泉源」という温泉地と「源泉」という温泉地があります。統計的なデータがある訳でもなくあくまでも私の経験上の推測ですが、西日本では「泉源」という場合が圧倒的に多いように思います。温泉が湧き出す場所を「泉源」、そこから湧き出すものを「源泉」というふうに使い分けています。例えば兵庫県の有馬温泉では、古くから「天神泉源」「御所泉源」などのように使われています。
これに対して東日本では、湧き出す場所も湧き出したものもどちらも「源泉」と呼ぶことが多いようです。ただし何故か北海道においては登別温泉など「泉源」が使われる温泉地も少なくないようです。
泉源と源泉の使い分けについては明確な規定があるわけではありませんが、温泉法では第2条において、「温泉源とは、未だ採取されていない温泉をいう」と規定されているにとどまり、泉源と源泉については言及されていません。さらに、環境省による「温泉法の逐条解説」によると、「温泉源とは従来泉源という用語をもって表現されていたものと実体的には同一のものである。しかし、泉源という用語は、水と土地とを一体的に観念して使用されているのが通常であるから、厳密にいえば、従来の泉源を純粋に水の面から把握したものが温泉源である」ということです。
かなりややこしいので頭が混乱しますが、どうも温泉法で規定された「温泉源」とは地上に湧出する前の「地下に胚胎した状態の温泉水」のことを指しているようです。そして、その場所(温泉が胚胎している土地とか、これから湧き出そうとしている孔の場所)のことを特に「泉源」という言葉で定義しているように感じ取れます。私は法律に疎いですので、解釈が間違っていたらごめんなさい。
ということもあり、私は、湧き出す場所を「泉源」、そこから湧き出すものを「源泉」と区別して使用しています。西日本タイプです。岐阜に住んでいるからという訳ではなく、「そう区別すべきである」という結論に至っているからです‥‥。