温泉博物館 名誉館長の 温泉ブログ

  温泉の科学や温泉現象について、わかりやすく解説します

風光明媚な奥飛騨温泉郷「深山荘」が営業終了へ

新穂高温泉「深山荘」

岐阜県の奥飛騨温泉郷・新穂高温泉にある「深山荘」が、今月末(2026年5月31日)をもって営業を終了することが、当館の公式ホームページに掲載されています。

北アルプスの急峻な山々に抱かれた蒲田川沿いの一軒家で、蒲田川と一体化したように作られた露天風呂は、最高のロケーションにあり、まさに「風流」そのものでした。晴れて雲のない日には、露天風呂に浸かりながら槍ヶ岳の頂を眺めることができました。夏は、入浴と同時に川遊びもできました(ちょっとはずかしいですが)。私の大好きな温泉でした。

蒲田川沿いの風光明媚な混浴露天風呂

露天風呂の底には白い湯の華がたくさんたまっている

営業を終了する理由は、ホームページによると、「深山荘上側にあります谷の土砂が堆積してきたため、いつ被害が発生するか分からない状況となってきました。被害があっては遅いため営業終了の判断となりました。」ということです。裏山が崩れて施設に被害を被った過去もあることから、苦渋の決断をされたことと察します。

急峻な裏山に「岩肌が露出した谷」が見える(Google Mapより引用)

私の中では「最高峰」に位置する温泉であっただけに大変残念ですが、正しい判断であることを大いに讃え、感謝いたしたいと思います。

 

これまで、たくさん楽しませていただき、ありがとうございました!

 

「エメラルドグリーの温泉」咲花温泉のこと

新潟県咲花温泉

新潟県五泉市の阿賀野川河畔にある咲花(さきはな)温泉に行ってきました。「咲花温泉」と聞いてもあまりピンとこない方が多いかと思いますが、エメラルドグリーンの硫黄泉がかけ流される素敵な温泉地です。

現在は6軒ほどの旅館からなり、温泉街(といってもほぼ旅館と駅のみ)のいい感じに寂れた雰囲気と秀逸な温泉に癒されます。私は今回初めて訪れましたが、とっても印象深い大好きな温泉地となりました。

古くから阿賀野川の川岸に温泉が自然湧出していたそうで、昭和29年にこの地で掘削を行い、57℃の温泉を掘り当てたのが咲花温泉の始まりだといいます。「咲花温泉」という名前も素敵ですが、もともと「先鼻」と呼ばれていた地名を、温泉旅館の開業と共に「咲花」と改名したとのことです。いい名前を付けられたと思います。

エメラルドグリーンの温泉

咲花温泉の特徴は何と言っても「エメラルドグリーン」の温泉の色です。時間の経過や温度変化等により、色が澄明なエメラルドグリーンから濁りをともなうグリーン、白濁へと変化することもあり、わが国の中でも「色のインパクト」が大きい温泉地として知られることとなりました。

うっすら呈色した時の温泉(撮影許可済)

各旅館に供給されている「エメラルドグリーンを呈する源泉」はいずれも「咲花温泉6号井」で、現在の泉質は「単純硫黄泉」です。硫黄泉を規定する主な成分は「硫化水素イオン」で、遊離硫化水素も少量含まれています。

前回の平成26年の分析では「含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉」でしたが、前回成分総計が1028mg/kgであったものが新しい分析時には1000mg/kgという塩類泉の規定値以下に下がってしまったようです。とはいえ、塩類泉との境界付近に位置することには間違いなく、ほぼ「含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉」の性質を受け継いでいるものと思われます。

なぜ、エメラルドグリーンの温泉になるのか?

咲花温泉でやはり興味深いのが、「なぜエメラルドグリーンの温泉になるのか」ということですね。

同じく緑色の温泉としてよく知られているのが、岩手県の国見温泉や長野県の熊の湯温泉などです。これについては、東邦大学の高松博士らの研究により、「成分として含まれる多硫化イオンの黄色」と、「太陽光が温泉中に含まれる炭酸カルシウムまたは硫黄粒子によってレイリー散乱を引き起こして呈する青色」との混色によるものであることが明らかになりました。多硫化イオンの黄色というのは、かつて販売されていた「六一0ハップ」や「草津温泉ハップ」などの液体入浴剤の原液を薄くした色です。

咲花温泉の旅館には、旅館の説明や約款が収められたファイルの中に、「咲花温泉を考える会・温泉ソムリエ団」による、温泉の解説がありました。温泉地は温泉で商いをしている訳ですので、自分たちが扱っている商品(温泉)が「どんな温泉か」ということをお客さんにきちんと説明することは、説明責任を果たすということからも非常に大切なことだと思います。こういったことは当たり前のことのようで、なかなかなされてこなかったことですので、すばらしい取り組みだと思います。説明書もとっても丁寧にわかりやすく解説されています。

旅館の部屋に置かれた温泉の解説書

ところで、この解説書によると、「何故お湯が緑色なのか」という肝心な部分の説明として、「それは、咲花温泉に含まれる金属カチオンという成分のためです」「空気に触れるとお湯を美しい緑色にしてくれます」と記述されています。これについて少しだけ考えてみたいと思います。

この説明には「金属カチオンという成分」と表記されていますが、温泉に関する現在の日本語表記で「カチオン」という言葉が使われることはあまりありません。カチオン(cation)とは陽イオンのことで、これに対して陰イオンのことをアニオン(anion)といいます。したがって「金属カチオン」というと、ナトリウムイオンやカルシウムイオンや鉄イオンといったものの総称となります。古い温泉成分表などが掲示してある場合、カチオンやアニオンといった言葉が使われています。

「カチオン」という言葉が使われている某温泉の古い分析書

イオンは基本的には無色ですが、例外的に水溶液中で有色となるものは主に遷移元素という仲間で、化学で習った元素の周期表の真ん中あたりに位置しているものです。このうちよく知られている金属イオンとして、Fe2+(淡緑色)、Fe3(黄褐色)、Cu2(青色)などが思い浮かびます。

ここからはあくまでも憶測で失礼なのですが、「金属カチオンという成分のためです」と言われたのはたぶん昔のお方で、直観的に、「水溶液中で緑色を呈するFe2の存在に起因すること」を言いたかったのではないかと思います。

ところが、咲花温泉6号井の温泉分析書を見てみますと、薄い緑色を呈するFe2+の含有量は0mg、Fe3(黄褐色)についても0mgで、鉄のイオンは含まれていません。

なぜエメラルドグリーンの温泉になるのか(私見)

ここからはエメラルドグリーンの温泉になる理由を私なりに考えてみました(机上の空論ですが)。

温泉分析書や、いろいろな旅館のさまざまな状況での浴槽の色の写真など、次のような情報がありました。

➀湧き出したばかりは「無色」、時間の経過とともに「澄明なエメラルドグリーン」に変化し、さらに時間の経過とともに「濁りのあるウグイス色」のようになり、最終的に「白濁」になる変化をたどることが知られている。すべての旅館ではないようですが。

②色の変化は時間の経過のみならず泉温の変化によっても起こることが知られている。

③水溶液として緑色を呈する金属陽イオンであるFe2+は全く含まれていない

④単純硫黄泉の「硫黄泉」を規定する成分「遊離硫化水素」「硫化水素イオン」「チオ硫酸イオン」のうち、咲花温泉に含まれるのは大部分が「硫化水素イオン」であり、遊離硫化水素は少量含まれている。

⑤カルシウムイオンが26.5mval%、炭酸水素イオンが4.8mval%含まれている。

これらの情報より次のことが考えられそうです。

❶単なる金属陽イオン(金属カチオン)の色ではない。

❷温度の低下や、時間の経過などにより、遊離硫化水素が個体の硫黄粒子となって析出したり、炭酸カルシウム粒子として析出したりして、さらにそれら粒子が大きく成長していく現象が見られる。生成された粒子が小さいうちは太陽光がレイリー散乱(青色に見える)を起こし、粒子が大きくなるとミー散乱(乳白色に見える)を起こし、その結果、温泉がや青色や乳白色に呈色して見える。

❸温泉成分として大量に含まれる硫化水素イオンと、遊離硫化水素の酸化によって生成される硫黄が反応して、澄明な黄色を呈する「多硫化イオン」が生成されていく。

HS  {(X-1)/8 }S8    ⇄   Sx2+H

❹一つの浴槽の中で❷や❸の反応が同時に進展する。

すなわち、これらから、次の仮説を考えました。

仮説 「咲花温泉がエメラルドグリーンや乳白色を呈するメカニズム」

湧き出したばかりの無色透明なお湯が、空気に触れ始めたり温度が低下する。これによって遊離硫化水素から個体の硫黄ができ始め、それが既にたくさん含まれている硫化水素イオンと反応し、「多硫化イオン」が生成されて黄色く呈色する

これと同時進行で遊離硫化水素から個体の硫黄粒子が生成され(あるいは炭酸水素イオンとカルシウムイオンから炭酸カルシウム粒子が生成され)、これらの粒子が存在するために太陽光を受けるとレイリー散乱を起こして青色に呈色する。

すなわち、多硫化イオンの黄色とレイリー散乱の青色の混色により緑色に見える。この緑色も、はじめは澄明なエメラルドグリーンであるが、硫黄(炭酸カルシウム?)の粒子が時間の経過とともに大きく成長するとミー散乱を起こして乳白色が濃くなり、多硫化イオンの澄明な黄色と、散乱によって青色~乳白色へと変化する色の混色により、うぐいす色から乳白色へと変化する

五泉市観光協会ダウンロード用パンフレットより抜粋

旅館によって色の付き方に違いがある

いろいろな旅館のホームページやSNS上の写真を見ると、同じ咲花温泉でも旅館によって色の付き方に違いがあるようです。濃いエメラルドグリーンになる旅館もあれば、薄い色の旅館もあります。また、うぐいす色や白濁などのように濁りやすい旅館もあれば濁りにくい温泉もあります。

咲花温泉は道に沿って細長く分布しているため、咲花温泉6号泉源からの引湯距離や引湯の設備の状況によって違いが出てくると思われます。

緑色になる仕組みとして仮に上述したような仮説が正しいとすると、多硫化イオンや硫黄の生成が大きなカギを握っています。引湯中に温泉中に含まれる遊離硫化水素が抜けると、緑色を濃くするのに不可欠な多硫化イオンや、ミー散乱を引き起こして濁りをつくる硫黄粒子が生成されないため、薄い透明感のある緑色のお湯になります。うぐいす色や乳白色への変化も少なくなります。また、源泉から引湯中に温度があまり下がらない場合と、かなり下がってしまう場合でも、遊離硫化水素などの個体の粒子となって析出する量が変わってくるため散乱の仕方も変わってきます。

また、同じ旅館内に複数の浴槽がある場合、浴槽ごとに換水の曜日を変えたり、温度差を付けたりすることによって色具合が異なり、浴室内に色とりどりの浴槽ができ上ります。

阿賀野川を眺める部屋

咲花温泉。しっかり硫化水素臭が香るエメラルドグリーンの極上の湯。もう一度行きたい素敵な温泉地です。

 

 

福島県奥会津の「玉梨温泉」のこと

福島県の玉梨温泉に行ってきました。日本中に大好きな温泉がいっぱいありますが、福島県の奥会津地方の只見川流域やその近辺の温泉がとりわけ大好きです。漫画家「つげ義春」の匂いがプンプンするエリアです!

玉梨温泉恵比寿屋と隣の八町温泉「亀の湯」

只見川沿いの早戸温泉、湯倉温泉、大塩温泉。只見川から少しだけ山あいに入った玉梨温泉、西山温泉。他にもたくさんの温泉がありますが、最近私が最後に落ち着く先は玉梨温泉です。玉梨温泉はつげ義春の作品『会津の釣り宿』の舞台でもあります。

2011年7月の新潟・福島豪雨災害により、何か所かの橋が流されるなど再起不能とも思えるような甚大な被害を被り「廃線」という2文字が頭をよぎったJR只見線でしたが、11年の月日を費やして、2022年10月1日に全線開通となりました。全国各地で廃線化が進む中で、奇跡のような出来事に思えました。

そんなJR只見線の会津川口駅から野尻川沿いに5kmほど向かった所に玉梨温泉があります。厳密に言いますと、野尻川の右岸に八町温泉の泉源があり、対岸の左岸側に玉梨温泉の泉源があります。かつてはこれら川を挟んだ両岸にある「玉梨温泉」と「八町温泉」を別々の温泉地として位置づけていましたが、現在は両温泉間で温泉の「やりとり」があるため、同一の温泉地として位置づけられています。

玉梨温泉「恵比寿屋旅館」

新鮮なお湯がかけ流される恵比寿屋の内湯(撮影許可を受けています)

恵比寿屋の個性的な露天風呂(撮影許可を受けています)

温泉の充実した恵比寿屋に宿泊すると、すぐお隣に混浴共同浴場の八町温泉亀の湯、橋を渡って真向かいに玉梨温泉共同浴場と日帰り入浴施設のせせらぎ荘があります。真っ白な雪に包み込まれた会津の原風景の中で、超一級の温泉にゆっくりとほぼ独り占めをしながら入ることができました。玉梨温泉は私が思い描く「湯(とう)源郷」そのものです。

対岸にある玉梨温泉共同浴場(青い屋根の建物)

お湯がドバドバかけ流される玉梨温泉共同浴場の浴槽

混浴の八町温泉共同浴場

八町温泉共同浴場の脱衣所と浴槽

新鮮なお湯がかけ流される八町温泉共同浴場

ちくま文庫刊『つげ義春の温泉』には、昭和45年に撮影された玉梨温泉の写真が3枚、早戸温泉の写真が3枚、西山温泉の写真が4枚、大塩温泉の写真が3枚掲載されています。それぞれの場所に行って写真と今の様子と見比べてみましたが、いずれも現在でもなお「つげ義春ワールド」が色濃く残っている、素敵な温泉地のままでした!

玉梨温泉も登場するちくま文庫『つげ義春の温泉』

奥会津の温泉地には比較的高温の温泉が湧いています。とくに西山温泉エリアは国内有数の地熱発電所「柳津西山地熱発電所」が設けられている程の地熱地帯として知られています。近隣には活発な活動を伴うような派手な火山の存在はなく、感覚的には「こんな所になぜ地熱発電所があるの?」といったところです。

柳津西山地熱発電所。無人で秋田火力発電所から遠隔操作されている

掘削井から地熱発電所につながる蒸気のパイプ

次の図は、土井和巳著『日本の熱い温泉と地質』から引用した地質図に温泉地をプロットしたものです。

土井和巳著『日本の熱い温泉と地質』p98から図20を引用

玉梨温泉や早戸温泉に程近い「沼沢湖」は、今から5400年前の大噴火によってできた新しい時代のカルデラ湖です。このカルデラを形成している火山「沼沢火山」は、気象庁から「活火山」として認定されています。地下のこういった火山の熱源によって温められた熱水が断層を伝って上昇しているものと思われます。

 

 

新潟県岩室温泉の「黒湯」のこと

新潟県岩室温泉

新潟市の中心部から車で40分ほどの所に、古くから湯治場として栄えてきた「岩室温泉」があります。新潟の奥座敷として重宝され、往時は岩室芸妓が100名程存在していたような温泉地でした。現在は旅館やホテルが9軒のみとなり、「ほどよく寂れた感」のある素朴な温泉街となっています。近くには弥彦神社や弥彦温泉もあります。

「黒湯」が湧く温泉地になった

岩室温泉の新時代は「黒湯」との出会いからでした。新しく掘削して2015年から使用を始めた「岩室4号源泉」が、浴槽で黒色を呈する「黒湯」だったのです。浴槽に張られたお湯が黒い析出物によって真っ黒に見え、状況によっては黒色の度合いが変化したり、白濁したりするという「特徴的な温泉」になりました。泉質は「含硫黄―ナトリウム・カルシウム―塩化物泉」です。いいお湯です。

観光施設の足湯に張られた「黒湯」

なぜ黒湯になるの‥

岩室温泉の「黒湯」は、東京湾周辺や金沢市周辺などで見られる、いわゆる「モール温泉」などと呼ばれる腐植物質に起因するものとは異なり、多くのホームページなどでは、「温泉が黒くなる原因」として温泉に含まれる鉄分と硫化水素が反応して黒色の硫化鉄ができるため」とされています。塩原元湯温泉大出館の「墨湯」などの場合と同じように考えられています。

かつて撮影させていただいた大出館の「墨湯」

観光施設「いわむろや」の足湯で私が観察した時には、黒く見える温泉も、すくってみると澄明のお湯に黒色の煤のような沈殿物が底にたまっていました。分析したわけではないので何とも言えませんが、経験的には「マンガンの酸化物」も関与しているような感じを受けました。ちなみに分析書の値は、硫化水素や硫化水素イオンは多いですが鉄の含有は少なく、マンガンはそこそこ含まれています。

黒湯の「湯使い」

環境省の資料によると岩室温泉では、湧き出した泉源から各施設の浴槽までお湯が引湯管で運ばれる間に途中で、ガスセパレータ、受湯槽、反応槽、沈殿槽、ろ過装置、配湯槽などを経由します。旅館によっては、さらに循環利用したり消毒剤が投入されている場合もあります。ちなみに、ガスセパレータ―とは温泉に含まれているガスを意図的に抜く装置で、沈殿槽とは有害であったり有色の析出物などをあらかじめ沈殿させてから配湯するもので、これらを通すと泉質は多少なりとも変わっていきます。

同じ「黒湯」の源泉を使用していても、旅館やホテルによって「湯使い」が異なれば、浴槽の中での様相も異なってきます。自分が「期待している黒湯の特徴」があるかどうか、事前にインターネット上の写真等で確認して宿選びをするといいですね。

岩室温泉は「黒湯」を売りに

平成24年に、日本記念日協会から「9月6日」は「岩室温泉・黒湯の日」と認定され、お土産として数々の「黒湯グッズ」を販売するなど、今や岩室温泉は「黒湯」を売りにした戦略を大々的に進めています。

黒湯を宣伝するリーフレット

物産館の「黒湯シリーズ」のお土産コーナー

とはいえ、黒湯になる「岩室4号源泉」を利用している旅館ホテル7軒のうち、黒湯の特徴が味わえるような「湯使い」をしている所は意外と少ないような気がします。さらに日帰り入浴を受け入れている所も少なく、それらには条件的な制約もあります。日帰り入浴施設も「臨時休業中」でしたし、正直、岩室温泉で黒湯に入浴することはかなりハードルが高いような気がしました。

一番最初の写真の観光施設「いわむろや」の足湯は、硫化水素臭が立ち込める中で個性の強い優れたお湯にゆっくりつかることができ、とっても素晴らしい足湯であると思いました。足の裏が真っ黒になる体験も、「岩室温泉」へ行ったというインパクトの強い思い出になることと思います!

宝塚歌劇場の対岸は古くからの温泉場なんです!

宝塚歌劇場

岐阜に住む私たちが「宝塚へ行く」というと、間違いなく宝塚歌劇場へ観劇に行くことを意味します。

昨日、ひょんなことから星組の公演を見に行くことになりました。特に興味があった訳でもないといいますか、『ベルサイユのばら』がヒットしていた頃のイメージが微かに記憶の隅にあるぐらいでした。実際に観て、「完成された舞台芸術」に感動をしました。

宝塚歌劇場/大ホールはさらに左手奥にあります

華やかな大劇場の入り口ロビー

開演前の大ホールの熱気(開演前は撮影可でした)

宝塚温泉

実は、華やかな宝塚歌劇場の川の対岸は、古くから存在する「宝塚温泉」の温泉場なのです。神戸新聞の記事によりますと、「明治20年に温泉場として開業し、大阪万博が開催された1970年には約50軒の旅館が立ち並んでいた」といいますが、現在は、温泉旅館1軒、温泉を引くホテル1軒、公設民営の日帰り温泉1軒のわずか3施設のみとなっています。いずれも林立するマンションに挟まれるように存在し、かつて温泉場であったという面影すらありません。

対岸の「かつての温泉場」。中央が温泉旅館

なんと、宝塚温泉は「深部流体起源」の温泉

宝塚温泉は、温泉科学的に近年脚光を浴びている温泉です。南海トラフより紀伊半島の下に潜り込んだ「フィリピン海プレート」から搾り出された高温の水「深部流体」が、そのまま断層に沿って60kmあまり上昇して湧き出した温泉であることが明らかになっています。有馬温泉や紀伊半島の高温の温泉などと同様のメカニズムです。

なお、宝塚温泉のような「深部流体起源の温泉」については、地質標本館のホームページに掲載されている「過去の特別展」のページに、「プレートテクトニクスがつくるなぞの温泉/深部流体」のブックレットにおいて大変わかりやすく解説されています。

「ウィルキンソン炭酸水」発祥の地

明治22年頃、イギリス人の実業家「ウイルキンソン」が、宝塚駅に程近い武庫川右岸の生瀬地区(現自治体は西宮市に所属)において炭酸水の鉱泉を発見し、翌年に現宝塚市内に工場をつくり、瓶詰めして商品化を始めました(アサヒ飲料HP等による)。家庭で炭酸水を飲むという文化が浸透していなかった日本国内において、現在のように「ボトリングされた炭酸水を直接飲む」というスタイルを普及させたのがこのウィルキンソン炭酸水だそうです。

現在はアサヒ飲料が商標権を所有しており、「ウィルキンソン」という名前で炭酸飲料が販売されています。天然の鉱泉水(炭酸泉)を使用している訳ではなく、水と炭酸ガスから製造されています。

街で「ウィルキンソン炭酸水」を見かけられたら、ぜひ、宝塚温泉のことを思い出してください!

「ウィルキンソン」の商標で販売されている炭酸水

宝塚温泉の名物「炭酸煎餅」

近くの有馬温泉では古くから「炭酸煎餅」がつくられ、今もなおお土産に根強い人気ですが、宝塚市国際観光協会のホームページによると、宝塚温泉でも120年ほど前から炭酸泉を使用した「炭酸煎餅」がつくられていたそうです。現在も有馬温泉と同じような円柱状の缶に詰められたものが販売されています。炭酸泉の湧出地ならではのお土産でですね。

宝塚のお土産「炭酸煎餅」

宝塚歌劇場の中の売店の一画にも「炭酸煎餅」のコーナーがありました。華やかなお土産が並ぶ売店の中で、ひっそり閑としていましたが、私にとっては「お湯組のトップスター」であり、炭酸煎餅が一番輝いて見えました。「宝塚温泉」とともに歩んだ歴史のある温泉土産が存在することは、今もなお「温泉場」であることの証なのです。

地図上には「温泉場」らしい記載が見られる (Google Mapsより引用)

上の地図(Google Mapより引用)を見ると、「炭酸水湧出地」「宝塚温泉碑」「ウィルキンソンタンサン発祥の地」「炭酸煎餅本家黄金家本店」「与謝野晶子歌碑」「宝塚温泉ホテル若水」「ナチュールスパ宝塚」など、温泉場であることが伝わってくるような単語が散見されます。

「武庫川」を挟む大劇場と温泉場 (Google Mapsより引用)

写真(Google Mapより引用)右上(武庫川左岸)の屋根が茶色い建物群が、宝塚劇場関係のものです。左下(武庫川右岸)が、温泉場のあった地区です。

温泉博物館のHPをリニューアルしました!

下呂発温泉博物館」も、おかげさまでこの春には開館22年目を迎えようとしています。これまで多くの皆様にお越しいただき、心より感謝申し上げます。

今回、温泉博物館のホームページをリニューアルいたしました。ちょっとだけでも覗いていただければうれしく思います。

https://geroonsen-museum.com/

 

博物館の展示の様子を少しだけ紹介させていただきます。

温泉博物館へのエントランス

下呂発温泉博物館の建物の外観

温泉が湧き出す仕組みの説明

世界や日本の飲泉カップ

温泉地オリジナルの温泉細工

江戸時代の温泉番付

特別天然記念物北投石」や玉滴石(オパール)など、珍しい温泉沈殿物

温泉絵図や旅館の古いパンフレットなど

地下の温泉(熱水)脈に生成される自然金や自然銅ナゲット

温泉専用のパイプや掘削用ビット

温泉水を利用した様々な製品

温泉発見伝説に登場する動物たち

泉質別の温泉水やグッズの紹介

温泉に関する実験・体験コーナー

温泉関係の書籍や論文、定期刊行雑誌など

下呂温泉へお越しの際は、温泉博物館へもちょっとだけ寄ってみてください!

「入浴者心得」に温泉の本質をみる

新年おめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

モール温泉を湛える鹿児島県「前田温泉」の浴室

鹿児島県川内高城温泉の共同浴場

昨年は、地元で愛される共同浴場にたくさん浸かることができ、改めて温泉のすばらしさを再認識することができました。多くの共同浴場には「入浴者心得」のような看板が掲げられ、高い所から入浴者を律していました。

宮崎県えびの市「亀沢共同浴場」の「入浴心得」

じっくり読むと、「みんなで愛すべき温泉を大事に大事に守りながら恩恵にあずかっていこう」という「本気」が伝わってきます。

「湯に入る時は不潔な洗い落とすこと」

そう、不潔な洗い落とすのです!

お湯は絶対に汲取らぬ事。但しお産の場合はその限りにあらず

すごいですね。それほど古い看板のようには見えませんが、自宅でお産をし、ここからお湯を汲んで行ったのでしょうか。重曹成分の強い真っ黒なモール温泉でしたが、この真っ黒な温泉の産湯に浸かったのでしょうか。

「浴場を子供の遊び場にしない。子供を持つ親はお互いに注意すること」

「お互いに注意し合える」共同浴場のような場でこそ地域の教育力が発揮されてきたのでしょう。こういったコミュニティーの中でのしつけは大切ですね。今の世の中で大きく欠けていることのような気がします。

鹿児島県「前田温泉」の「入浴者心得」

「十二才以上の男女は混浴しないこと」

最近は子どもの異性の浴室での入浴が許可される年齢もだんだん低くなっているようですね。

「浴槽内にて石鹸、糠、洗粉等を使わないこと」

それにしても浴槽内で「糠(ぬか)」「洗粉(あらいこ)」を使わないって、今ではあまり想像がつきませんね。私は洗粉(あらいこ)という言葉をこの看板で初めて知りました。

「浴槽内にて義歯を洗はぬこと」

そんな輩がいらっしゃったから、このような注意が促されているのですね。

最後に、この看板、かなり古い物とは言え、「精神病者」が入浴お断りとなっているのはいたたまれません。

鹿児島県「菱刈温泉」の「入浴者心得」

ここは、混浴禁止が7才以上に引き下げられています。そして、この温泉もまた浴槽内にて石鹸、糠(ぬか)、洗粉(あらいこ)等を使用してはいけないと明記されていますね。糠とか洗粉というのはそんなにメジャーなものだったのでしょうか。

とにかく、共同浴場は本当に大切な場であったからこそ、みんなで大切に守ったのですね!

いつまでも温泉が庶民のものでありますように!

そして、富裕層のためのものになりませんように!

 

私も「入浴の心得」を遵守して温泉の恩恵にあずかる所存でございます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。