温泉博物館 名誉館長の 温泉ブログ

  温泉の科学や温泉現象について、わかりやすく解説します

2024-01-01から1年間の記事一覧

東西で違う「ケロリンの風呂おけ」

東西で文化が違う 「どん兵衛のだしの違い」や「雑煮の餅の形」、「エスカレーターの左右どちらを空けるか」など、「東西で文化が異なる」といった例をよく耳にしますね。 そんな中で入浴に関するものとしては、特に「ケロリンの風呂桶の違い」や「銭湯の浴…

白濁湯の穴場「乗鞍高原温泉」のこと

長野県乗鞍高原温泉 温泉にさまざまな泉質のバリエーションがあることはとてもうれしいことです。「どんな温泉に出会えるか」ということは温泉巡りの醍醐味だからです。と、言いつつも、私は「強烈な硫化水素臭を漂わせる白濁の温泉」にあこがれます。 私の…

上高地のこと

久しぶりに長野県の上高地に行ってきました。私は上高地は日本一美しい場所だと思っています。学生時代、槍ヶ岳に登るために訪れたのが最初。「こんな美しい場所があるのか」と感動したことを今でも忘れません。以下、晩秋の上高地です。 上高地から見た穂高…

温泉の泉質名の「英語訳」はどう書くの?

インバウンドの影響もあり、わが国の温泉に外国人がたくさん訪れるようになりました。そのため、温泉施設内での入浴作法や、基本的な温泉情報を説明しなければならない状況が生まれていますが、泉質名などの温泉用語を外国語で表記して説明することはなかな…

「天然記念物にしたい」温泉現象

希少な温泉現象 別府市の「地獄めぐり」や、宮城県吹上温泉の「間欠泉」など、温泉現象が観光名所となっている所は数多くあります。全くの天然に由来するものもあれば、人工的な掘削等によって誕生したものもありますが、いずれにしても、稀少で特異な温泉現…

「火山活動の中に浸かる」岩手・藤七温泉

火山活動の直湧き温泉 温泉が浴槽の下から直接湧き出す、いわゆる「足もと湧出温泉」はけっこうありますが、野湯でない限り火山活動中の噴気地帯のような場所の「足もと湧出温泉」は意外と少ないようです。 浴槽では、温度も成分も湧出量も「人間に都合よく…

秋田・玉川温泉のこと

岐阜から遠い所なのですが、しばらくすると何故か「行かなくては」という衝動に駆られるのが秋田県の玉川温泉です。他の魅力的な温泉とも一線を画し、私の中では別次元の「大本山」的な存在として位置づいています。温泉科学の研究対象としても注目を集め、…

「強烈な石油臭」の新潟県新津温泉のこと

強烈な石油臭のする温泉 新潟市秋葉区(旧新津市)の「新津(にいつ)温泉」は、温泉ファンの間で「日本一石油臭が強い温泉」とささやかれています。私もこれまでに石油の香りがする温泉にいくつか入ったことがありますが、ここ新津温泉が匂いに関しては断ト…

秋田・奥奥八九郎温泉のこと

奥奥八九郎温泉の由来 奥奥八九郎温泉は、十和田湖にほど近い秋田県小坂町の山の中にある野湯というか、「放置された温泉」です。 奥奥八九郎温泉遠景と温泉沈殿物 温泉孔から湧き続ける奥奥八九郎温泉 このあたりは、地質的にはグリーンタフと呼ばれる「新…

岐阜・長良川温泉のこと

長良川温泉 長良川温泉街は、「金華山と岐阜城」を借景に流れる清流長良川のほとりにある旅館街です。岐阜市民はこのあたりの景色が大好きです。今まさにここで鵜飼が行われています。こんなすばらしいロケーションの中で茶色い温泉に入れるのが長良川温泉の…

温泉って、こんなに濃いの! 

温泉の濃さは入浴剤何袋分? 温泉分析書にある総成分量の数値を見ても、それが一体どれぐらい濃いのかよくわかりません。そこで、単純に「水に何かが溶けている」といった濃さを、「家庭の浴槽(約200L)に、市販の入浴剤を何袋分溶かした濃さに匹敵するかで…

温泉地の「注意喚起看板」

温泉地や火山地帯の火山ガス事故 昨年(2023年)の7月、「秘湯へ行く」と言って出かけた男性が、福島県安達太良山中腹の「湯の花採取場」付近で死亡するという事故がありました。火山性ガスの硫化水素の吸引が原因とみられています。火山ガス発生危険個所と…

地下水脈の把握は難しいけれど‥‥

リニア工事から考える 今から2年ほど前、青森県の嶽温泉や秋田県の秋の宮温泉郷などで、湯量の減少や温度の低下がみられ、温泉地の存続にかかわるショッキングな出来事として報じられました。同様な現象で頭を抱える温泉地は少なくありませんが、その多くが…

『世界の絶景温泉』はすごい本です!

鈴木浩大著『ほぼ本邦初紹介!世界の絶景温泉』 昨年、家の近くの本屋さんで棚の目立たない所にあったものを見つけ、手に取って表紙の写真を見ただけで買うことを即決した本が、鈴木浩大さん著の『ほぼ本邦初紹介!世界の絶景温泉』です。 鈴木浩大著『ほぼ…

温泉は何故「適応症」なのか

「効能」ではなく「適応症」 「○○に効く温泉はどこですか」と尋ねられることがよくあります。尋ねてくださる方にとっては、処方されている薬ではなかなか症状が改善されないので、「温泉の力でなんとかならないだろうか」という切実な願いがあるに違いありま…

給湯口の飛沫が心配です!

温泉とレジオネラ属菌 「温泉浴槽から基準値を大幅に上回るレジオネラ属菌が検出された」といったニュースが後を絶ちません。 平成14年に起きた宮崎県の日向サンパーク温泉の事故は大変ショッキングで、記憶に新しいところです。6月の体験入浴を経て7月1日 …

温泉博物学「外国の温泉土産・入浴剤」

台湾北投温泉のお土産「湯の華」 台湾の北投(ぺいとう)温泉には「地熱谷」と呼ばれる温泉の自然湧出地帯があります。沼のような底から高温の酸性硫黄泉がボコボコと湧き出していて、北投温泉の泉源となっています。日本で特別天然記念物に指定されている「…

温泉博物学「温泉軟膏」

なんか効きそう!「血の池軟膏」 別府鉄輪温泉の名勝「地獄めぐり」の一つに、赤い色をした「血の池地獄」があります。池の見学場所の傍らには、「血の池軟膏」などの販売コーナーがあります。 別府地獄めぐりの一つ「血の池地獄」 「血の池軟膏」とは、血の…

日本の「各温泉地」の「温泉科学情報」をまとめて紹介する本があります!

『図説 日本の温泉 170温泉のサイエンス』 今から4年前に、『図説 日本の温泉 170温泉のサイエンス』(日本温泉科学会監修)という本が、朝倉書店から出版されました。わが国の数多くの温泉の中から、温泉科学的に重要であると思われる温泉地170を取りあげ、…

飲酒後の入浴は、かえって「酒が抜けにくい!」

飲んだ後に「ひとっ風呂浴びて酒を抜く」? 以前は、飲み屋街のような所に深夜営業のサウナがあり、酩酊に近いような人たちで賑わっていました。みんな「酔いをさますために」風呂やサウナに入っていました。 「風呂やサウナで汗をいっぱいかけば、アルコー…

紀伊半島の旅「橋杭岩」

橋杭岩 橋杭岩(はしぐいいわ)は、和歌山県串本町にある、奇岩が一列に長く並んだ景勝地で、国の天然記念物に指定されています。 和歌山県串本町の景勝地「橋杭岩」 国指定天然記念物 橋杭岩はどのようにしてできたのか 「橋杭岩」の景観がどのようにしてで…

紀伊半島の旅「那智の滝」

那智の滝 「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されてはや20年が経とうとしています。 紀伊半島を旅するのが好きで、よく出かけますが、今回の白浜への家族旅行では久々に那智の滝や、那智大社などへも寄り道(温泉以外はみんな寄り道)してきました…

パンダの温泉地「白浜温泉」

「家族旅行」という旅行 いつもほとんど一人温泉旅か、一人酒場巡り旅をしていますが、今回は家族旅行で和歌山県の白浜温泉に行きました。今までにない「温泉色の薄い」旅になりました。 白浜温泉遠景 奥の砂浜がオーストラリアから砂を運び入れている「白良…

「温泉文化」をユネスコ無形文化遺産に登録すること

少し前ですが、新聞に「温泉文化」をユネスコ無形文化遺産に登録することをめざす知事の会が発足したという記事がありました。また、日本温泉科学会においても、温泉文化の登録に関するシンポジウムが開かれたことがあります。各界で登録への機運が高まって…

「一番良かった温泉はどこですか」と聞かれますが‥‥

良かった温泉がいっぱいありすぎて いろいろな人から、「今まで行った中で一番良かった温泉はどこですか」と、本当によく聞かれます。正直なところ、温泉が好きすぎて、良かった温泉がいっぱいありすぎます。甲乙つけてランクづけることなど、私には到底無理…

誤解される泉質②「単純温泉」

「単純」という言葉のイメージ 「おまえは本当に単純だ」と言われると、なんとなく情けない気分になります。落語に登場する、ちょっとお馬鹿でまぬけな「与太郎」みたいな‥‥。 念のため、「単純」という言葉を広辞苑第五版で引いてみました。 ➀ 単一で他の要…

誤解される泉質「硫酸塩泉」

泉質名を見たり聞いたりして、その本質を正しく理解してもらえればよいのですが、どうもそうではない現状があるようです。 少し古い話になりますが、筆者は、2004年に「温泉はどのように理解されているか」というアンケート調査を行い、その結果をまとめまし…

温泉に生息する生物

温泉が大好きなのは、人間や渋温泉地獄谷の猿だけではないようです。 温泉に入る長野県渋温泉地獄谷野猿公苑のニホンザル 全国各地の温泉には「温泉発見伝説」があり、白鷺や熊、鹿や猿などの動物による発見伝説も枚挙にいとまがありません。真偽のほどはと…

伊吹山 「積雪記録世界一の山」

岐阜県と滋賀県の県境にある伊吹山は、標高1,377mの山で、深田久弥の日本百名山にも選ばれています。ヤマトタケルノミコトの伝説をはじめとした故事来歴、薬草や稀少生物、さざれ石や山の特異な形成史など、伊吹山の魅力は尽きません。 滋賀県側から見た伊吹…

温泉分析書の「電気伝導率」とはどんな単位?

電気伝導率(mS/m )とは 温泉分析書の上の方のpHなどが記載されているあたりに電気伝導率という項目が位置づけられている場合があります。 「電気伝導率」が記載された温泉分析書 電気伝導率の単位「mS/m」は、「ミリ ジーメンス マイ メートル」と読みます…