『図説 日本の温泉 170温泉のサイエンス』
今から4年前に、『図説 日本の温泉 170温泉のサイエンス』(日本温泉科学会監修)という本が、朝倉書店から出版されました。わが国の数多くの温泉の中から、温泉科学的に重要であると思われる温泉地170を取りあげ、日本温泉科学会の会員が「各温泉地の自然科学的な側面」について執筆しました。
これまでに実に多くの温泉に関する書籍が出版されていますが、温泉地ごとにまとめられたタイプのものとしては、観光ガイドブック的な内容であったり、文化および自然遺産的な紹介であったり、健康増進的な観点から書かれたものであったりと、温泉地を訪ねることを前提としたものがほとんどだと思われるのですが、本書はそういった書籍とは一線を画すもので、研究成果に基づいた温泉地ごとの自然科学的な温泉情報がまとめられています。
内容は、温泉地によって多少異なりますが、泉質や湧出量などの他、温泉が湧出する場所の地質、温泉が湧出するメカニズムなどについて図や写真を用いながら、わかりやすく簡潔にまとめられています。また、それらの根拠となる学術論文等も参考文献として一覧にして記載されているので、研究や、発展的な理解のためにも役立てることができます。
私も、編集委員として携わりながら、「中部地方の温泉の概要」や、下呂温泉(岐阜県)、奥飛騨温泉郷(岐阜県)、湯屋温泉(岐阜県)、地獄谷温泉(長野県)、松代温泉(長野県)、花山温泉(和歌山県)について執筆いたしました。
「温泉を深く理解したい方」の情報源として、あるいは温泉科学の入門書として役立てていただければ幸いです。4700円+税と、ちょっと値段が高いので、まずは図書館等で手に取ってみて見てくださいね。