温泉博物館 名誉館長の 温泉ブログ

  温泉の科学や温泉現象について、わかりやすく解説します

下呂温泉が湧き出すメカニズム

下呂温泉とかつての露天風呂「噴泉池」 残念ながら現在は足湯として利用


岐阜県下呂温泉は、川の水や降った雨(天水)が断層などから浸み込んで地下深くに達し、それが地下深くで温められ、再び湧き出してきたものです。

 

かつて下呂温泉地内の飛騨川の河床から自然湧出していた(年代不詳)


トリチウム(水素の同位体 )による調査の結果、下呂温泉のある源泉は「降った雨が地下深くに浸み込んで、それが温められて湧き出す」までの時間が40年程度であることが示唆されました。

意外と知られていないのですが、1950~1963年に海外で行われた核実験により、地球全域に人工のトリチウムが降り注ぎ、地球上を循環する水が汚染されました。すなわち、この時期に地球上の水に人工のトリチウムが溶け込み、水がマーキングされた形になりました。皮肉なことに、これを利用して、水の年代を測定することができた訳です。

 

また、地下深くまで浸透した水を温めている下呂温泉の熱源は、今から10~12万年前に噴出した湯ヶ峰火山の「まだ完全に冷え切っててない」岩体ではないかと考えられています。

下呂温泉の泉源の分布図

何十年という時間をかけて出来上がる温泉を一気に大量に汲み上げてしまっては当然枯渇してしまいます。そのため、下呂温泉では昭和43年から集中管理方式を採り入れ、乱掘された源泉の中から十数本の優秀な源泉だけを残し、そこから2つのタンク(水明館側と湯之島館側)に貯めて、パイプで各旅館に送っています。

要するに川の両側では集めた源泉が異なる訳で、その結果、泉質も微妙に異なってきます。「水明館側の方がつるつるする」とかの言葉が聞こえるのも、そういった理由で然りです。反対に、湯之島館側の泉質は、MgイオンやCaイオンといった有効成分が多い傾向があります。MgイオンやCaイオンが多くなるとつるつる感が減少します。