温泉博物館 名誉館長の 温泉ブログ

  温泉の科学や温泉現象について、わかりやすく解説します

露天風呂の敵、「アブ」と戦おう!

夏場の山の露天風呂は、アブとの出会いが待ち受けています。

アブ対策の基本は素肌を隠すことですが、なにしろ露天風呂では素っ裸であり、この上ない無防備な状態でアブに立ち向かうことになります。

車の上にとまったアブ

アブの雌は、産卵に必要なタンパク質を得るために、動物の血液を吸って生きています。そのため、動物の吐く二酸化炭素や、体温、特殊な匂いなどにすぐに反応して、ターゲットとなる動物を察知します。そこへ裸の人間が現れてくれれば、アブにとっては「棚からぼた餅」です。したがって、アブがつきまとってきたら、とにかくすぐにお湯に浸かり、肌を晒す部分を最小限にしなければなりません。   

 

アブは、ハチのように毒針で刺すのではなく、のこぎりのような鋭い歯で皮膚を切り裂いて、そこから滲み出てくる血液を吸います。そのため、一瞬であっても皮膚の上に止まってから(着地してから)切り裂くので、皮膚に止まらせないようにすることが大切です。ハチの場合、手で振り払えば刺されることがありますが、アブの場合は振り払っても大丈夫という訳です。とにかく、近寄ってきたら手で振り払うことです。

 

手っ取り早い方法としては、濡れたタオルを頭にかけて、首から上を守ることです。白黒斑(まだら)の牛のホルスタインの場合、アブは黒色の部分に群がり易いことが知られていますので、白いタオルで黒い髪の毛を覆い隠すことは効果的のようです。

 

アブは、車の排気ガスや熱にも極めて反応し、すぐに寄って来るため、野湯へ車で向かう際にはすぐにエンジンを止めないと、車の周りがアブだらけになってしまうこともあります(何度も経験したことがあります)。写真のアブも、車に群がってきた輩のうちの一匹です。

 

噛んで血を吸うのはすべてメスのアブです。「メスのアブが私に群がってきて、自分の血を吸っていった。ま、いいか」と思うか、「メスのアブと真剣に戦うか」、夏が来たら考えましょう!