温泉成分からつくられる入浴用「天然湯の華」
工場で重曹などの成分を調合してつくられる入浴剤とは別に、温泉地において温泉成分を樋などで沈殿させたり、太古の温泉沈殿物を加工したりしてつくる天然の入浴剤もあります。特殊なものとしては、別府明礬温泉の明礬小屋で結晶を成長させてつくるものもあります。
かつて私が調べた時(2010年)には、全国の34か所の温泉地において入浴用「湯の華」がつくられ、ご当地温泉の土産物として売られていることを確認しました。私の調査ですべてを網羅できたわけではないと思いますので、実際にはもっと多く存在していると思います。
温泉地で作られる入浴用「天然湯の華」は、大きく2つのタイプに分けられます。
1つは、温泉成分である炭酸カルシウムの沈殿物(石灰華)を粉末に加工したタイプで、白色や薄い黄土色をしています。家庭の浴槽に入れると白濁しますが、水に溶けにくいため、一部が浴槽の底にたまることがあります。ほぼ無臭で刺激がないのが特徴です。代表的なものは、岐阜県の新平湯温泉でつくられているものです。
もう一つのタイプは、硫黄泉に含まれる硫黄成分を樋などに沈殿させて作るもので、多くが薄黄色をしていますが、黒色のものもあります。いずれも硫化水素臭がします。粉末状、塊状、丸い団子状と形はさまざまです。細長いミョウバン(硫酸アルミニウム)の結晶を含むものもあります。浴槽に入れると、硫化水素臭がする硫黄泉のようで、硫黄泉ファンにはたまりませんね。
草津温泉の湯畑周辺の露店において「湯の華」が売られている光景を見られたことがあるかと思います。湯畑で作られているのはプリンカップをさかさまにしたような形の容器に入ったものに限られ、ブランドで、結構な値段がします。
それに対して湯畑の露店で売られていたのは、先のとがった円錐形(昔のパラソルチョコレートのような形)の袋に入っていて、少し安く売られていました。
平成18年、湯畑周辺で「湯の華」と称して売られているものが、実は石油を精製する時に産業廃棄物できる黄色い硫黄に、白い炭酸カルシウムの粉末を混ぜて、湯畑産の湯の華の色に加工したものだということが発覚して、公正取引委員会から排除命令と、業者名の公表がなされました。
その後しばらく露店は見当たりませんでしたが、今ではちゃっかりと昔のように露店がでて、「湯の華?」を販売しています。本物ですかね?
以下、当時の公正取引委員会の文章を掲載します。
お詫びとお知らせ
下記各社は、不当景品類及び不当表示防止法第6条第1項の規定に基づく公正取引委員会の排除命令に従い、一般消費者の誤認を排除するため、次のとおり公示いたします。
下記各社は、次表のとおり、「湯の花」と表示した入浴剤を販売しておりましたが、この表示は、原材料として原油から生産された硫黄、又は当該硫黄に炭酸カルシウムを混ぜたものを用いているにもかかわらず、群馬県吾妻郡草津町に所在する温泉で採集された湯の花を用いているかのように示すものであり、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すものでした。これらの商品につきましては、既に販売を取り止めましたことを、報告申し上げます。この度、商品の表示に関しまして、消費者の皆様に誤認を与えることとなり、大変ご迷惑をお掛けいたしましたことを、深くお詫び申し上げます。平成18年12月27日
ということです。
温泉地で「ご当地の湯の華」を探すのも楽しいですよ。