温泉博物館 名誉館長の 温泉ブログ

  温泉の科学や温泉現象について、わかりやすく解説します

名所になる要素を考える

鳥取県東郷温泉「寿湯」

温泉通の皆さんの中には、下の写真を見ただけでどこの温泉かわかる人が結構いらっしゃるのではないかと思います。

東郷温泉寿湯のメインアプローチ

温泉へのメインアプローチの「通路の幅が狭すぎる」ことで知られる鳥取県東郷温泉の寿湯です。

もちろん鄙びたかけ流しのいい温泉には間違いがないのですが、写真を見ると通路が狭すぎて、「自分だったら通れるかしら」と、心が揺さぶられることになります。

私は閉所が嫌いで、しかも人一倍ふくよかな成長を遂げているため、インターネットに掲載された写真を見て「絶対に私には通れない」と思ってビビっていました。しかし、日に日に「幅の狭い通路を通ってみたい」という願望が強くなり、とうとう現地まで出かけてしまいました。

その結果は、‥‥‥腹を引っ込めなくても無事‥‥。

寿湯の入り口付近の様子

名所になる要素とは、人を引き付ける何か一つの魅力があるということですね。「普通に狭い」と「いい加減にしてよ!」と思え、「狭すぎる」と「すごいなあ 」と思えるのは、東洋大学内田彩さんの言葉を借りれば、「付加価値とは、そこにしかない独自の価値」ということなのでしょう。

通路の先に現れた東郷温泉寿湯の雄姿

入り口の掲示 入浴料200円

素朴な脱衣所の様子

鄙びた雰囲気の寿湯の浴室

私の心の中にしっかりと登録された「My登録有形文化財」です。一日でも長く残り続けることを願うばかりです。