岐阜県と滋賀県の県境にある伊吹山は、標高1,377mの山で、深田久弥の日本百名山にも選ばれています。ヤマトタケルノミコトの伝説をはじめとした故事来歴、薬草や稀少生物、さざれ石や山の特異な形成史など、伊吹山の魅力は尽きません。
石灰岩の採掘により、西側(滋賀県側)が大きく削り取られていますが、その傷跡も多少目立ちにくくなっており、何と言っても、琵琶湖と濃尾平野に挟まれて高くそびえる雄姿は、圧倒的な存在感とオーラを発しています。
2084校の校歌に登場する伊吹山
「かなり遠方からも見える」暮らしの中に溶け込んだ山であるため、滋賀県側も濃尾平野側も、数多くの学校の校歌に登場しています。1986年に滋賀県伊吹町が「伊吹山をうたった校歌の調査」を行いました。今から40年程前のデータになりますが、滋賀県、岐阜県、愛知県、三重県の、小学校、中学校、高校を合わせて、2084校の校歌に伊吹山が登場し、歌われていました。その伊吹山から遠く離れた愛知県が1341校と、過半数を超えていることが興味深い事実です。濃尾平野の遠くからの方が山の全体像が見えやすいようです。
積雪世界一の記録保持者
そんな伊吹山ですが、実はあまり知られていない「世界一の記録」を保持しています。1927年(昭和2年)2月14日、伊吹山山頂で、11m82㎝ という積雪を観測しました。これは、観測可能な場所における積雪世界記録で、現在も破られていません。
日本海からの北西の季節風の通り道に位置しており、伊吹山にぶつかって雪雲を発生させるため、標高が低い割に雪が多く降り積もります。
「さざれ石」を生む伊吹山
伊吹山の上半分は、赤道付近からプレートに乗ってやってきた石灰岩(一部は緑色岩)からなっています。緑色岩はもともと海底火山の本体をつくっていた岩石、石灰岩はその上部のサンゴ礁由来の岩石で、それらが大陸に付加してできた地質です。
伊吹山をつくる石灰岩が、崖から崩れ落ちて細かくなり、それが再び固まったものが、君が代に詠まれる「さざれ石」です。岩石名としては石灰質角礫岩に分類されます。
伊吹山周辺では、ごく普通に見られ、決して珍しいものではありませんが、「君が代のさざれ石」として官公庁などに贈られてきました。この地方の多くの学校の校長室や玄関などにもったいぶって飾られています。飾られているには飾られているわけですが、生徒もだれも見向きもしないという厳しい現実があります‥‥。
「さざれ石の、いわおとなりて‥‥♫」と歌われますが、「さざれ石」が「いわお(おおきな塊の石)」になるのではなく、「いわお」が崩れて「さざれ石」になるのです!