良かった温泉がいっぱいありすぎて
いろいろな人から、「今まで行った中で一番良かった温泉はどこですか」と、本当によく聞かれます。正直なところ、温泉が好きすぎて、良かった温泉がいっぱいありすぎます。甲乙つけてランクづけることなど、私には到底無理なことです。
長野県渋温泉郷の「角間温泉」のこと
無性にまた行きたくなる温泉というのがたくさんあります。長野県の角間(かくま)温泉もその一つです。長野県には角間温泉が二つありますが、湯田中渋温泉郷の角間温泉です。
猿の入浴で有名な地獄谷野猿公苑からほど近い温泉地で、時代から取り残されたかのような(いい意味で)湯治場です。共同浴場「大湯」を取り囲むように数件の温泉旅館が立ち並び、さらにすぐ近くには2つの素朴な共同浴場があります。温泉街には店も、自動販売機もありません。
私は、「越後屋」旅館と「ようだや」旅館に宿泊したことがありますが、いずれも歴史を感じる木造の素敵な旅館でした。越後屋旅館の方は趣の異なる洒落れた貸切風呂が3ケ所ほどあったような記憶があります。とにかく心地よい風呂でした。ようだや旅館には、素朴なかけ流しの風呂付の部屋があり、これもまた風情があるというか、いつでもすぐに温泉に浸かれる幸せにひたることができました。
旅館の温泉と3つの共同浴場(大湯、滝の湯、新田の湯)に入りましたが、温泉で誰かに出会ったことがありません。いつも一人独占状態で、贅沢極まりないひと時でした。
全国的にも、こういった温泉地が本当に少なくなりました。数年ぶりに訪れてみると、庶民的な旅館がリフォームして高級旅館に変わっていたり、温泉街の何軒かが廃業していたりして寂しい思いをすることが少なくありませんが、角間温泉はいい意味で「昔のまま(だと思う)」がずっと続いています。いつまでもこのままで残っていてほしいと願うばかりです。
「角間温泉とかけて、お気に入りの服ととく」
「その心は」
「一度きたら、またきたくなるでしょう」