温泉博物館 名誉館長の 温泉ブログ

  温泉の科学や温泉現象について、わかりやすく解説します

温泉博物学 「飲泉カップ」

飲泉許可が下りている温泉を飲むことにより、薬を飲むのと同じような薬理効果を得られる場合があります。

飲泉は特に東ヨーロッパで古くから盛んに行われていました。

飲泉の際に使われるのが、専用の「飲泉カップ」です。

下呂発温泉博物館に展示されている様々な温泉地の「飲泉カップ

上の写真は、下呂発温泉博物館に展示してある飲泉カップです。手前の美しいデザインのものは、チェコのカルロビバリのものです。取っ手がストローになっていて、自慢のマイカップでゆっくりと時間をかけて飲みます。 

チェコ カルロビバリ温泉の飲泉カップ 取っ手部分がストローになっている

奥の方の白っぽいものは、ヨーロッパのものを真似てつくられた日本のものです。大分県長湯温泉、群馬県伊香保温泉や四万温泉、長野県鹿教湯温泉などで売られていましたが、「飲泉カップ」を使って飲泉をする「文化」にまでは定着していないようです。

秋田県玉川温泉の飲泉カップ

上のプラスチック容器のものは、秋田県玉川温泉の飲泉カップです。強酸性のため、飲泉によって歯に悪影響を及ぼすことがないように、ストローをさして飲むようにできています。また、カップに付いているメモリを利用して、水で薄めて濃さを調節します。

飲泉文化が伝わる大分県塚野鉱泉の飲泉所とマイ飲泉カップ(ひしゃく)

上の写真は、古くから飲泉文化がある大分市の塚野鉱泉の飲泉所です(何年か前に撮影したもので、今の様子とは多少違っているかもしれません)。右の壁にかかっている「ひしゃく」が、塚野鉱泉流マイ飲泉カップです。一人一人専用のひしゃくが飲泉所にキープされています。聞くところによると、一気に豪快に飲む風習があるようですが、飲泉の正しい方法とは真逆のことが行われているのかもしれません。飲泉は、飲泉許可を受けた温泉において、定められた分量をゆっくり時間をかけて行うことが原則ですね。

古くから飲泉が行われている岐阜県湯屋温泉「奥田屋」の飲泉所 飲泉許可岐阜県第1号

どこの温泉も飲める訳ではありません。そして、給湯口から浴槽に注がれているお湯はすべて飲めるわけではありません。

給湯口から大量に出てくる循環湯には、とてもここでは書けないような「さまざまなエキス」が含まれていますので、飲んだら悲惨です。