温泉博物館 名誉館長の 温泉ブログ

  温泉の科学や温泉現象について、わかりやすく解説します

強酸性温泉の舞台裏

群馬県草津温泉「湯畑」


我が国を代表する温泉地のひとつである群馬県草津温泉。背後にそびえる草津白根火山の恵みです。

草津白根山の火口湖「湯釜」


草津白根火山の火口には、青白く美しい温泉水を湛える火口湖「湯釜」があります。湯釜のpHは1.2程度と、かなりの強酸性です。白根火山から火山ガスをたっぷり含んだ地下水(温泉)が麓の草津温泉の随所で湧き出し、お湯はここでもpH1.6~2.1(源泉によって異なる)の強酸性を示します。酸性の原因は主に硫酸です。

草津温泉に投げ入れられてとけた1円玉


草津温泉で使用した強酸性のお湯がいろいろな所へ流れ出ると、その流域には魚をはじめとしたさまざまな生き物が生息できない環境になり、作物も育ちません。

温泉排水などで酸性の湯川を中和する場所



 

アルカリ性の「石灰ミルク」で酸性の湯川を中和している様子


中和反応の結果、塩(えん)が生成され、硫酸カルシウム(石膏)や塩化カルシウム(融雪剤として使われる塩カル)を大量に沈殿させます。

沈殿した硫酸カルシウムや塩化カルシウムをそのまま放置しておけませんので、一時的に溜めておくために、郊外に品木ダムという大きなダムをわざわざ作りました。そして、湖底に溜まる度に浚渫(しゅんせつ)して取り除き、また別の場所に運んで処理しています。

 

すばらしい温泉地ですが、舞台裏は大変ですね。