温泉博物館 名誉館長の 温泉ブログ

  温泉の科学や温泉現象について、わかりやすく解説します

温泉で見られる「油膜のようなもの」の正体

それは油膜ではありません

勤務している職場のまわりの溝の至るところに、油膜のようなものができていました。

水路にみられる「油膜状バイオフィルム


これは、温泉や温泉の排水溝などの水面でもよく見かける「油膜状バイオフィルム」と呼ばれる、「鉄バクテリア (鉄酸化細菌)」がつくる「微生物皮膜」で、よく油がが浮いているのと間違われるものです。近くでよく見ると、油光沢はあるものの、油ではないことがわかります。

自然界にごく普通に存在している「鉄酸化細菌」が、鉄分の多い水や温泉の水面で繁殖し、2価の鉄と二酸化炭素を含む「水や温泉水」から、黄褐色の3価の鉄(水酸化鉄)をつくり、その過程でエネルギーや、「自分を固定するための粘性成分」も生成します。そのため、写真のような油膜状バイオフィルムが見られるような所では、付近に「黄褐色のブヨブヨした沈殿物」が見られます。

バクテリアが生成した黄褐色の「水酸化鉄と粘性物質」

 

温泉の浴槽の中にも「黄褐色のぶよぶよした沈殿物や浮遊物」が見られることがありますが、これは温泉成分に由来するの鉄分の沈殿物と、微生物が生成した粘性物資の混合物の場合が多いようです。

平湯温泉の新鮮な湯の表面の「油膜状バイオフィルム

 

岐阜県奥飛騨温泉郷などでも見かけられます。もちろん人体に影響はありません。新鮮な源泉かけ流し温泉の証しだと言えましょう。